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名古屋高等裁判所 昭和32年(ネ)52号 判決 1957年4月26日

岐阜県恵那郡岩村町飯羽間一、三七〇番地

控訴人

伊藤繁市

中津川市堅清水町

被控訴人

中津川税務署長

大蔵事務官

寺田保太郎

右指定代理人

名古屋法務局訟務部

第一課長 鈴木伝治

名古屋国税局

大蔵事務官 服部操

岩沢忠弘

中津川税務署

大蔵事務官 草川瀞

右当事者間の昭和三十二年(ネ)第五二号昭和二十九年度所得額無申告に対する決定処分取消請求控訴事件につき、次の通り判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人は「原判決を取り消す。被控訴人が控訴人に対し昭和三十年七月十二日頃付を以つて、昭和二十九年度所得額無申告に対し農業所得、給与所得及びその他の事業所得ありとしてなした課税額一万八百九十円無申告加算税額二千五百円とする(昭和三十一年二月十一日訂正に係る)決定処分は之を取り消す。訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする」との判決を求め、被控訴代理人は主文同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述、書証の提出認否は当審に於て控訴人が甲第十六号証、第十七号証を提出し、被控訴代理人が同号証の成立を認めた外は、原判決摘示の通りであるからこれを引用する。尚、原審に於て職権を以つて証人伊藤はるゑの尋問がなされた。

理由

当裁判所の判断は原判決理由欄に記載してあるところと同一であるから之を引用する。但し、右判示中「供出代金の受取が控訴人の名に於て控訴人自身が行つていた」とあるは、「控訴人所有名義の農地につき供出代金の受取が控訴人の名に於て控訴人自身が行つていた」と言う趣旨であり、原判決八枚目裏五行目「原告自身が之を行つていたこと」の次に「伊藤とよ所有名義の農地については同人名義で供出代金の支払を受けたが、控訴人に於て控訴人名義にて判示農業協同組合に貯金していたこと」を加える。尚、判示の如く協同組合の加入、出資、供出代金の受取、肥料の購入、農業用資金の借受が控訴人名義でなされたことは控訴人が農業経営の主宰者たることを推認する資料としたものであつて、名義人に課税する趣旨ではない。又成立に争いのない乙第六号証、第七号証の記載に徴すれば、控訴人はその勤務時間外には十分に農業を営む余暇があるのであるから、控訴人が公務員たることは控訴人が農業経営の主宰者たることを否定する特段の事情と認め難い。

依つて、控訴人の本訴請求を矢当として棄却した原判決は相当であるから、本件控訴を棄却すべきものとし、民事訴訟法第三八四条第一項、第九五条、第八九条を適用し、主文の通り判決する。

(裁判長判事 高橋嘉平 判事 伊藤淳吉 判事 木村直行)

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